関係者インタビュー


喜劇人類館を“今やる意義”「差別や偏見にどう向き合うか」/演出・上江洲朝男さん

 202121314の両日に西原町のさわふじ未来ホールで予定される「『喜劇』人類館」。1903年に大阪で行われた博覧会で、琉球人を含む“異民族”が展示された人類館事件を題材にした同作が7年ぶりに公演されます。

 

 本公演の演出を担当し、自身も2004年の大阪公演などで演劇集団創造の一員として「調教師ふうの男」を演じたこともある上江洲朝男さんに、この作品を再び現在上演する意義などについて聞いてみました。

 ―「喜劇 人類館」は今の沖縄とどのようにつながっていると感じていますか?

 

2004年に大阪で人類館を演じた時に、気付かされたことがありました。それは『沖縄自体が、見世物小屋で展示されていたあの琉球人そのものではないのか』ということでした。県外から見た沖縄が『特異で面白おかしいもの』として、どこか差別の対象として見られている雰囲気がある一方、沖縄の人は、それについては特に何も感じていないことが多い。この関係性が『観客(本土)』と『沖縄(展示物)』となっていることに、沖縄の人自身が気付いていないと感じています。場面によっては、沖縄の内部で(本島から見た離島などに)差別が起こることもあります」

 

「大阪公演後の、観客も交えた打ち上げの席で『私は沖縄2世です』『私は3世です』と自己紹介する4050代の大阪の方がいて、驚いたんです。2世や3世という表現は、移民だけではなく同じ日本にいる人々の間でも使われるものかと思いました。そして、自身のルーツが沖縄にあるということが、重い告白のように聞こえました。明かすことを迷っているようにも見えました。人類館事件は100年以上も前の出来事ですが、それは100年以上もの間、苦しんでいる人たちが居続けたということだと気づかされました。安室奈美恵が世に出てきて以降『沖縄って良いところだね』という感じになった、と個人的には感じています。南沙織やフィンガー5など、それ以前にも売れた歌手はいましたが、あの当時はまだ沖縄が『特異なもの』として見られているという印象でした」

 

2021年にこの作品を沖縄で上演する意義についてはどのように考えていますか?

 

1970年代は、“喜劇”人類館は沖縄で自虐的に笑えた内容でした。(琉球人の「標準語」が苦手だったり容姿を揶揄されたりする様子を)みんなケラケラ笑ってたんですよね。笑い飛ばしていたというか。それが、2008年の東京公演には『喜劇だけど笑えない、笑ってはいけない』『笑ってしまったら、差別を認めることになるのではないか』という反応を感じました。『そういった違いをバカにしちゃいけない』っていう価値観が育った側面で、沖縄の人も含めて、それが笑えなくなってきました。しかし、言い方を換えると、『笑うこと=差別的だ』と捉えている人は、実は、差別的な意識がある、ということを示しているはずです。『笑ってはいけない』と思っている人と、ただ何も考えずに笑っている人、というのは、(潜在的な差別意識について)違う気がします」

 

「差別や偏見は誰の中にでもあると思います。ただ『自分の中にある差別や偏見』とどう向き合うのかが分からない時代になっています。差別を『無いものにしたい』から考えないのではなく、どう付き合っていくのかが重要です。喜劇『人類館』を見て、思いっきり笑っても良いんです。この作品を通して、自分やみんなの中にある差別や偏見をどう捉えていくのか、を考えるきっかけにしてくれたらと思います。それが今、人類館の上演をやる意義なんですよね、きっと」

 

―演出家として意識したポイントはありますか?

 

「僕が(演出家として)こうしてほしい、ということだけではなくて、演者のやりたいことを聞いて進めています。演者の若い感性や、(陳列される男役である)津波信一さんの喜劇的なセンスを取り入れて創ろうと思っています。知念正真さん(作者で演出家、故人)の演出だったらきっと許されなかったと思いますが、アドリブも入れてもらって良しとしています。この作品を残していくために、受け取り手である若い人の感性を入れ込んで、創り変えていく必要があると考えています」

 

「役者さんには、『ト書きやセリフをしっかり読んで、自分なりに解釈してほしい』と伝えています。役者って複数ある解釈から一つを選んで表現する、というのが仕事だと思います。その解釈の選択肢をいかに多く出せるかが、役者としての幅の広さだとも思っています」

 

―作中では、場面や時間軸、人物が突如入れ替わったりするなど、変わった展開が特徴的です。

 

「登場人物が3人いるんですが、3人が同時に時空を移動するわけではないのが特徴です。1人だけ先に違う人物になっていたり違う場面に変わっていたり。(場面が変わっても)展開は繰り返すような構造も多く使われています。差別していた人がいつの間にか差別されていたり。この『繰り返し』が一つのキーワードですよね。作品のテーマである「差別、偏見、歴史」も、繰り返すじゃないですか。正義として差別したり偏見したりを、人は繰り返しています。このコロナ時代でも感染者やその家族、医療従事者を差別するということが見られます。こういう繰り返しに人は陥りやすいのです。場面が目まぐるしく変化しても、難しく考えずにニュートラルな気持ちで見てほしいと思います。素直に「演劇」の世界に入り込んでほしい。観客自体が主体となった時間旅行に身を任せ、その展開自体を自由闊達に楽しんでもらえたらなと思います」

(文・写真/長濱良起)

この事業は「令和2年度沖縄文化芸術を支える環境形成推進事業」にて、沖縄県と公益財団法人沖縄県文化振興会の支援のもと実施しております。